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草木六部耕種法
十九需実
柿も亦能く作るときは、甚上品なる果物にて、柑類に劣らざる産物なり、且其種類も紅柿(ごしよかき)、方柿(はちや)、〓柿青椑(さはししぶかき)、君選子(まめかき)等有り、此お作る植地は、西北高く東南低くて、打闊たる肥沃の地に宜し、又山下赤墳は殊に宜く、海辺沙地等には宜しからず、柿お作法は、唯其砧木お生長せしめ、此お伐て美果お結、良木の枝お接換(つぎき)する者なるが故に、青椑にても大にして能く熟したる柿〓お多く集め、此お肥良なる湿地に、冬中より埋て、上に藁菰お覆て、時々泔水(しろみつ)お澆置ときは、正二月の頃、頗芽お出す者なり、此お肥良の植地に橘子(みかん)の苗お植る如く、一段の畑に二百処許も穴お掘り、能く芽お出したる種子お、一箇づヽ臘土(らふど)〈寒中に野土と濃糞お混和して翻化させたる者なり、製法上にも出せり、若此物の無きときは、人糞と黒櫨(くろぼく)とお能くもみ合せたるも宜し、〉と共に穴中に安置し、土お六七分も被て少し圧付て置き、其茎出て後晴天永く継て乾燥するときは、泔お注べし、盛養水〈製法上に出せり〉なれば殊に宜し、斯の如して四五年間に笛竹の太に至らば、即伐て紅柿、方柿、〓にても望む所の枝お接穂すべし、凡そ柿は接木するときは、両三年の間に繁栄すること甚速なる者なり、凡柿は種子お栽て砧とするお法とす、然れども山野に生たるお掘採り来て、砧木にしたるは、良木の枝お接と雖ども其実下品にして、生長するも埒の明ざる者なり、 凡そ柿は正月中旬より二月中旬迄に接木すべし、能く精密に接たるは、百本に一本も誤ること無し、是れ元来接換して繁栄すべきの性なるお以てなり、或は雲柿は接木したる梢に、又接木すること三度に及ぶときは、其実に〓無しと、予も亦未だ此れお試ず、 橘子の条に説たる如く、一段の畑に柿二百本栽て、一本一千の実お結ぶときは、都合二十万なり、紅柿、方柿、〓柿等は、其の価大抵橘子に同じ、