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甲斐国志
百二十三産物及製造
一柿〈◯中略〉 袋柿(○○) 西郡相沢村の産物なり、松平甲斐守十二月に献上せり、又餌袋(えぶく)とも名く、是も乾柿にて〓お捼み出し去る故に袋と雲、白霜生じて甘美なり、同郡原七郷に、七種の商物の内に〓柿と雲あり、澀柿お灰汁に浸し、一夜にして甘味となれるお、荒目の円籠に入れ担して発売す、此辺にては畠の畔にも多く柿樹お植う、是も接頭に非ざれば澀気去り難しと雲、串柿は逸見筋澀沢村辺にて製す、釣柿も同筋諸村に在れども、佳品にはあらず、熟柿( /うみがき)は皮お削らず器中に貯へ置き、或は藁に裹み置けば熟して潰んとす、味殊佳し、烘柿( /うづみかき)は温灰に埋めて澀気おぬくなり、木練木〓( /こ子りきざはし)は妙丹とも雲、始めより澀気なし、御所柿と雲お第一の佳品とす、品類多くして下品なるもあり、一種初は澀く秋霜下りて朱熟し、肉中紫点多く生ずる者あり、木練中の最上品とすべし、是おも甲州丸と呼ぶ者あり、椑柿(こしぶがき/うるしがき)は形小なり、山野に生ずる者澀強し、搗て柿漆とすべし、桾〓鹿心柿( /さるがきやまがき)と雲も、皆此類お雲なるべし、