[p.0627][p.0628]
重修本草綱目啓蒙
二十四喬木
秦皮 と子りこ(○○○○) と子りこのき(○○○○○○)〈和名抄〉 たむのき(○○○○)〈同上〉 だごのき(○○○○)〈加州〉 あおたご(○○○○)〈木曾〉 とう子ぢこ(○○○○○)〈江州〉 一名細辛木皮〈本草必〓〉 攀雞木〈事文類聚〉 苦裏木〈訓蒙字会〉 梣槻〈通雅〉 この木寒地に多し、葉は呉茱萸葉の如にして、大にして鋸歯あり、両対して生ず、其節黒し、夏月枝梢に花お開く、実お結ぶ、闊さ二分、長さ一寸許の薄片なり、松子の形の如にして大なり、熟すれば褐色にして、長く穂おなして下垂す、地に下して生じ易し、一種葉小にして鋸歯ありて、にがきの葉に似たる者あり、下品なり、一種小葉の者は鋸歯なくして、紫藤(ふぢの)葉に似て短く、節に対して生ず、初夏枝梢に長穂おなして花お開く、栘楊(しでの)花の如にして弁細く白色、後実お結ぶ、形同して小なり、薬には皮お用ゆ、舶来なし、京師の薬舗に貸る者は、江州若州丹州より出す、皮少許お採て水中に浸せば、水面青色になる者真なり、唐山の松煙墨は、秦皮汁お用ひ色お助くること、集解に説けり、本邦にて皮お濃煎し膠となすお木膠と雲、仏経お写す墨に用ゆ、墨工これお貯ふ、国によりてこの木にも白〓お生ずること水〓樹と同じ、是もとばしりと雲、唐山にはこれあることお聞かず、