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本草綱目訳義
三十六灌木
蔓荊 はまはい〈古名〉はまかづら〈◯中略〉 京にうへても育つ也、小木高さ五尺計叢生す、年久きは丈余にもなる、本の木は地おはうてあり冬葉なく春葉お生ず、枝は残あり、葉両対丸して一寸ほどの大さ表黒みあり、裏白毛少あり香気多し、風吹ば香四方へ散ずるもの也、夏秋の間新枝秒に花つく美也、穂になり、穂に枝あり、花は牡荊の花の大なる也、本はつヽざきにして五つ分れ、中よりしべ出る瑠璃色也、花後実生ず、二分余円し、熟すれば胡椒の如し、堅へたの裏に白き処あり、実は黒み、われば香つよし、蒔てはへる也、今薬にするは此也、舶来なし、此皮お線香まぜて使也、此葉もとり抹香にする也、夫故浜しきみと名る也、日本に製する下品の線香はしもくれんの皮也、しきみの皮と蔓荊の皮とで造たる物也、