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大和本草
十一薬木
枸〓 倭漢二種あり、二種共に用ゆべし、唐枸〓最味厚、子お薬に用ゆるによし、さしても子おうえてもよく生ず、韮の如く連子うふべし、うへて未長時刈取こと、韮おかるが如くすべし、如此すれば春より秋まで其苗たへず、葉お生にてもゆびきてほしても食すべし、和漢共に味よし、茶にかへて用ゆ、本草に作飲代茶と雲へり、地によりて苗長じては虫食す、早く刈て食べし、三才図絵に好事の家に盆にうえて、几案の間の玩とすと雲、其実紅にして愛すべし、其子お肥地にうへ、其枝お正八九月にさす、根皮お地骨皮と雲、凡枸〓子及葉其性佳、軽身益気明眼目常服すべし、明目の功すぐれたり、本草時珍発明可考、最良薬なり、本草綱目附方金髄膏枸〓酒方可見、容曰、枸〓六七月生小紅紫花、随便結紅実、形微長如棗〓と雲は倭枸〓なり、刺あり、宗奭曰、此物小刺多く、大則刺少、倭枸〓亦如此、時珍説に、地によりて其葉厚し、甘州者其子円と雲、是は唐枸〓によく合へり、或曰、倭枸〓は溲疏なるべしと雲へども、右の本草の説に拠れば、唐の枸〓にも二種あり、倭枸〓も亦真枸〓なるべし、皆可用、