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安斎随筆
前編八
梔(くちなし)字はじと訓 日本紀に天梔弓おあまのはじゆみと訓ぜり、梔字くちなし也、はじとよむは正訓にあらず、義訓也、〈◯中略〉又和名抄染色具に、梔字和名久知奈之(くちなし)とあり、梔も櫨も黄色お染る具なるゆへ、はぢ弓に梔の字お借り用るなるべし、舎人親王の比、はじに櫨の字お用る事いまだ詳かならざりし故、黄染の義お取て、梔の字お借用せられしにや、梔木は弓材に非ず、櫨は弓材也、今も弓の側(そば)木に用之、古は丸木弓也、