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大和本草
十二雑木
〓(さく) 字彙音永、木可為笏、和名抄曰、柡佐久木、可為笏也、笏おしやくと訓ずるは、柡の木お似て作る故なるべし、飛騨国位山の一位の木にて笏お作ると雲、いちいの木、葉は榧に似て小なり、正月及五月挟むべし、活く、一説に三四月さすべし、春小白花お開く、枝葉の間に秋小実お結ぶ、赤色なり、漢名未詳、俗に伽羅木と雲、是いちいなりと雲、西土にて山白檀と雲、是柡の木なるべし、庭にうふべし、又楊弓の矢に作る、櫧(かし)の類にいちいと雲木あり、かしの木に相似たり、実もかしに似たり、櫧の下に詳にす、櫧に似たるいちい、是と同名異物なり、混同すべからず、いちいに二種ある事お知るべし、笏おさくと訓ぜし事、其義未詳、櫟(いちひ)の一名お柞(さく)と雲、いちいの木にて笏お作るゆへ、誤て〓お柞なりとして、さくと訓ぜしにや、櫟は横理ありて笏とすべからずといへども、堅致なる故、昔は櫟にても笏お作りしにや、いぶかし、鑿子木(いぬつげ)おも柞と雲、是にても昔は笏お作りしにや、櫟鑿子此二木共に異名お柞と雲、若古此木にてさくお作りし故にさくと雲乎、