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重修本草綱目啓蒙
二十六寓木
桑上寄生 くはのやどりき(○○○○○○○) 寄生 やどりき(○○○○)〈和名抄〉 ほや(○○)〈同上〉 やどるほや(○○○○)〈古歌〉 からすのうえき(○○○○○○○)〈防州〉 とびき(○○○)〈讃州〉 桑寄生一名混純螟蛉〈輟耕録〉 寓屑〈事物異名〉 寓童〈同上〉 桑生〈三因方〉 桑木冬児沙里〈村家方〉 桑絡〈医学正伝〉 桑樹上羊児藤〈同上〉 桑上羊児藤〈赤水玄珠〉 桑上牛児藤〈肘後方〉 桑樹のやどりきお桑寄生と雲、やどりきは寄生なり、其木の余気にて生ずる者にして、諸木共にあり、薬には桑上の者お用ゆ、鳥他木の子お食ひ、糞樹上に落て生ずるお寄生と雲に非ず、保昇の説は誤なること、宗奭弁ずる事明なり、寄生はそれ〴〵の木に由て生ず、故に各木に因て葉実の形異なり、鳥の糞中の木子樹窠に落て生ずる者もあれども、これは寄生に非ず、桑寄生は隠州の産お上品とす、凡そ蚕お養はざる暖地には、桑木採斫の苦なき故、木盛に茂り、木も古くなりて、枝間に寄生お生ず、皮中より幹お出し、他木の枝お挿たるが如し、枝葉両対し、柳葉の如く、躑躅葉の如くにして厚し、葉間に円実お結ぶ、南天燭(なんてんの)子の大の如し、熟して淡黄色透徹し内子見ゆ、破れば粘滑なり、隠州の産は、葉他州の者より大なり、桜柳朴梨等の寄生、桑上の者と形状相同く、乾者節節相離れ、葉葉自ら落つ、故に今薬家に販ぐ者、多くは和州芳野の桜寄生なり、桑上の者は枯れて枝葉共に黄色なり、他木の者は緑色にして黄ならず故に黄色に染て偽る者あり、本草原始に、茎葉黄自採者真と雲、本草彙言に、其他木如松楓楡(にれ)柳〓檞(けやきはヽそ)桃梅等、樹上間或亦有寄生、形類相似、気性不同、服之反有毒と雲、本草〓に別樹生者殺人と雲り、松上樅(もみ)上の者は葉柞木(いぬつげ)葉に似て、狭細にして厚く色深し、実は小豆の大の如し、紅熟して味甘し、櫧上の者はやしやびしやく(○○○○○○○)と雲、他の桑上にも生ず、一名てんばい(○○○○)、てんのむめ(○○○○○)、てんりうばい(○○○○○○)、〈加州〉きむめ(○○○)、〈土州〉しやういたどり(○○○○○○○)、〈同上〉葉は木ひよどりじやうごの葉に似て厚し、花は梅花に似たり、実は蒼耳実の如し、野州日光山に多し、即鄭樵爾雅の註の蔦なり、