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古今要覧稿
草木
おほたけ(○○○○) 〈はちく〉おほたけ、一名からたけ、一名あはたけ、一名はちくは、西土にいはゆる淡竹一名水竹也、その高さ凡二三丈、囲み七八寸にして、すべて地上より一二尺の間は節密にて、毎節相去る事二三寸、それより以上は節疎なる事、六七寸より或は八九寸に至る、其節の合たる貌、上節少しく高く起るといへども、下節の籜の脱せし跡よりも稍低し、これお細査する時は、毎節上に細小粒の如き物、横にならび付て、その大さ頗る瞿粟殻子のごとし、これは全く細根となるべき物の、地お離れて発する事、あたはざるお以て、皮中に其きざしお含めるなり、此種太高きものは、地上より十五六節、或は十七八節以上にて、始めて枝お生じ、丈低きものは十一二節、或は七八節以上にても枝お生ずるなり、その始の枝は双枝にて、其次の一節は独枝お生じ、又其次の一節より以上は、皆双枝なるもあれば、又始め独枝にして、其次の一節よりは直に双枝となるものあれども、大概は始より双枝は多くして、独枝は少なし、凡枝お生じて双枝なるは、始の一節の左枝は太く、右枝は細く、其次の一節は右枝は太く、左枝は細し、毎節相互にかくの如くして梢上に至る、其双枝よりまた小枝お生じ、小枝よりまた細枝お分ちて、其梢ことにおの〳〵葉おつく、其葉長さ二三寸広さ二分許にて、其先に葉相対し、三葉は其下につきて、すべて五葉お一朶とす、又三葉のもの、及び二葉相対して其葉細小なるものありといへども、それは全く年お経て、下葉のおのれと枯落しにて、必ずその性質にはあらず、またはちくの本竿節は、ま竹より低といへども、枝節は却てま竹よりも高く、其状頗る鶴膝の如し、扠其枝お生ずるかたは、左にても右にても、節上より竹身に細長なる一道の凹処ありて、枝お生ぜざるかたは全く正丹なり、また其竹身すべて白粉お帯るといへ共、殊に下節の本の周囲は、純白なる事、恰も一分許に截し白紙お、別に占せしが如し、或人曰、旧より相模国小田原に大竹とよぶものあり、即淡竹にして、其竿高さ三四丈、囲み八九寸にして先こけず、故に幟竿旗竿の用には、必ずこれお供する也、今は此竹林大久保加賀守御預りにて、漫に採る事お禁ずるお以て、土人或はおとめ竹ともいふといへり、〈◯下略〉