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古今要覧稿
草木
南京竹 〈慈竹〉南京竹は俗称なり、漢名お慈竹、一名義竹、一名孝竹、一名叢竹といひ、また一名子母竹、一名兄弟竹、一名慈孝竹、一名慈姥竹、一名孝順竹、一名王祥竹、一名釣糸竹、一名雲蓋ともいふ、これ即鳳尾竹の別種なり、故にその枝幹並に鳳尾竹に似て、毎葉鳳尾竹よりも長し、その高きものは二丈許、〈竹譜詳録〉低きものは六七尺、〈本草綱目啓蒙〉叢生数十百竿に至り、根窠盤結して他処に引ず、〈竹譜詳録〉その笋一年に両出し、夏笋は中より発して凉お母竹に譲り、冬笋は外より発して母竹の寒お護ると〈致富全書、遵生八揃、〉いひ、また数種あり、節間相去る事八九寸なるお籠竹と〈益部方物略記〉いひ、一尺許なるお苦竹と〈同上〉いふ、その〓弱くして地にたるヽお釣糸竹と〈同上〉いふ、扠江都にて、旧より義竹といへるは、多摩川のこなたなる、新田社の境内にあり、その葉並常に尋常の苦竹と一様なりといへども、その笋叢外に発する事なし、これは福以南有竹長刺雲慈竹類也と〈岡部疏〉いへるに、その趣相似たりといへども、此笋の叢外に発せざるは、植しより数百年お経て、皆人常に其辺お往来して、其地至堅なるお以ての故なるよし、或人いへり、されば此義竹は慈竹類にはあらざるべし、