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古今要覧稿
草木
金明竹 〈金竹〉金明竹、一名金竹、一名筋竹、一名しまだけは、漢名お黄金間碧玉竹、一名金鑲碧嵌竹、一名黄金間碧、一名斑桃枝竹、一名対青竹、一名青黄竹、一名越閃竹、一名界金竹、一名閃竹、一名黄竹、一名間竹といふ、岡村尚謙曰、本所押上村の人家に一叢林あり、高さおほよそ一丈五六尺、囲み二三寸、其幹地上より四五節お経て、始めて双枝、或は独枝お生ず、其枝左右細大の異なる、及び其節の隆起頗る苦竹と一様なりといへども、枝お生ずる節より以上は、凹処皆青色にして、枝お生ぜざるかたは黄色也、されども黄色なる中にも、其青色なる凹処お少しく離れて、別に一行の深青細縦道あり、其細縦道二行相並ぶものは、青色やヽ薄し、又下節の枝なくして、正円なる所も青黄色お互にする事、頗る上幹の如し、其幹お二つにわれば内白、肉は外面の青黄に拘らず、すべて淡青色お帯て常竹の如く純白ならず、其葉また苦竹に相似たりといへども、葉上に細縦白道二三行雑出し、すべて青色ならざるは、苦竹に異なり、此笋また苦竹とおなじく、五月の頃に生じ、その籜青黄紅の数縦道あり、其状頗る刷糸の如くにして、紫斑点ある事、又苦竹のごとし、其奇麗最竹幹よりも勝れり、味は大抵苦竹笋と相似て食ふべし、また幹葉共に小にして、毎節間三枝お生ずるものあり、その左右の枝は大にして、中枝は至て細小なり、これは尋常の苦竹のたま〳〵三枝お生ずるものあるに同じ、別種にはあらず、又和漢三才図会に、銀明竹、一名紗地竹あり、その荺色白して溝緑色とみえたり、これは金明竹の、土地によりて其色お変ぜし物なるべし、一種碧玉間黄金竹あり、これは竹身緑色にして、節間の凹処一道黄色なる物なれど、今甚希なり、また一種竹身半は青く、半は紫にて、二色相快ずるものお、旧は対青竹といふよし、僧賛寧が笋譜にみえたり、本邦には絶て此種ある事おきかず、  高麗竹 〈すぢ竹〉高麗竹一名蘇枋竹、一名筋竹は、漢名お金糸竹、一名白糸竹、一名刷糸竹、一名七絃竹一名箭竹といふ、その幹節並に女竹に似て、高さ三五尺、大さ小指の如し、毎節相去こと五寸許にて、三枝五枝或は七枝お叢生す、〈◯中略〉扠此竹わかき時は、通幹艶紅色なる事、頗る蘇枋お以て物お染しが如し、それに五六七行の青線洛ありて、宛も刷糸の如く、老る時はその紅色、おのづから淡黄に変じて、青色また薄し、今種樹家往々これお培養するものあり、其奇麗最愛すべし、往時此竹お薩摩より東都に奉りし事あるよし、これは今ある物は蓋しその遺種なるべし、