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古今要覧稿
草木
四方竹 〈四角竹〉四方竹一名四角竹は、漢名お方竹一名刺竹といふ、今江戸所々にこれあるといへども、もとは肥後国の産なりと〈丹洲図竹〉いひ、また琉球より来りしものなりとも〈本草綱目啓蒙〉いへり、所謂江戸にあるものは、その高さは九尺より一丈許に至り、毎節相去る事三四寸にして、いづれの節間にも、上によりて細澀砂ありて、砂紙お摩するが如し、また地上より一二節には、周囲に細小根つらなり生じて、それより以上は毎節すべて細小根となるべきもの、皆突起して頗る黍粟の類おならべたるが如く、粒々まばらに付て、その先或は尖りたるもあり、その所より切て二三節おこめて、地中に挿置ときは、おのづから黍粟状の如きもの延び出て、遂に細小根となるといへ共、五月の此の梅雨しきりに降つヾきぬる時にあらざれば、大方は根付難きものなり、扠此枝は根上十二三節にて、始めて独枝お生じ、それより双枝三枝となりて梢上に至る、これ新竹の形状なり、年お経る時は、その枝節よりまた二笋三笋お抽出て、五枝六枝或は七八九枝おも叢生す、その葉の状矢竹に似て、極めて細く、長さ五寸余、広さ五分計にして、葉先最細尖なり、新枝は四葉三葉お一朶とし、旧枝は五葉六葉或は七葉お一朶とす、その葉先に至りては、皆二葉相対して、正に木槵子葉の葉先の如し、此笋秋末より生じ、冬に至りて成長す、その籜すべて紫色なる小斑点ありて、愛すべく味またよし、