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古今要覧稿
草木
の 〈やだけ〉の、一名のたけ、一名やたけ、一名やのたけは、漢名お箘簬、一名笄箭、一名箭幹竹といふ、〈◯中略〉天武天皇の御時箭竹二千連お、太宰府に送り下せしも、また畿内の産なるべし、今も年ごとに、大和の芳野より難波の大城へ、此竹二千二百幹お貢するよし、〈採薬紀行〉また備中の矢島、及び丹波等にも、此竹お産し、その余の諸国にも、また極めて多し、今江都にて皆人使用するものは、上総より来るといふ、さて延喜の比は、此竹お以て熬笥洩籠薫籠及び籮茶籠等お作りしものなれども、今竹器お作るには、多く篠竹、或は箱根竹、或は淡苦の二竹お用ひて、此竹お用ゆる事お聞ず、 一種矢竹一種の矢竹は、今松平越中守大塚の下邸にあり、その高さ大抵五六尺にして、枝幹全く矢竹のごとし、葉も亦矢竹に似て、五葉或は四葉お以て一朶とし、その上葉は、すべて二葉相対して、毎葉白色間道あり、また一株のうちといへども、間道なくして、その色矢竹と一様なるもの交はれり、此種は往時清俗の携到せしお、長崎より輸せしものなりといひ伝ふ、その他またこれあることおしらず、