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倭訓栞
前編十二/須
すヾ〈◯中略〉 小竹の類おすヾといふは涼しき意にや、吉野の岳にすヾ分てとも、大たけのすヾ吹風にとも、すヾの下道ともよめる是也、神代紀に五百箇野薦といへるも此物成べしともいへり、或説に薦は篶の誤り、篶は黒き小竹也とぞ、鈴竹の笋おすヾといひしは、風雅集に、たかむなのほそきお奉られて、是はすヾか竹かいづれと見わきてと見え、古今著聞に、石泉法印鞍馬の別当にて、彼よりすヾお多くまうけたるお、或人の許へ遣すとて、此すヾは鞍馬の福にてさむらふにさればとて又むかでめさるな、笋の皮おむかぬお蜈蚣に寄ていへり、蜈蚣は鞍馬の福といひならへり、