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古今要覧稿
草木
実竹実竹一名実中竹、一名実心竹は、和漢通名にて、旧より陸奥国松島の竹島、〈本草觿〉及び阿波国一宇山に〈本草綱目啓蒙〉産するもの、その名殊に高し、〈◯中略〉陸奥国松島に産するあり、近頃大窪柳太郎、〈秋田の藩人、字お天民といひ、号お詩仏、また江山といふ、〉その地に遊歴して、二竿お携来りて杖とせしおみるに、一竿は長さ四尺余、径り五分許にて、毎節ま竹よりも高くして、その間相去ること三寸許、その枝お生ずるかたは溝渠ありて、常竹よりも至て深くして、下節上より上節下に至る、一竿は長さ五尺許にて、その節間六七寸、或は八寸許なるものありてやヽ太し、いづれも根に近き所の二三節は、常竹と同じくその節間つまりて短し、その根のきり口は、共に充実して心なしといへども、梢上のきり口に至ては、鍼お穿つべき程の細小竅あり、又小野蘭山の見たりしは、径り一寸余のものにて、舶来せしは径お二三寸のものと〈本草綱目啓蒙〉いひ、栗本瑞仙院の杉原氏により贈りしといへるも、また蘭山の見しと同じく、その径一寸許のものなれども、別に図せしは長さ五寸許の竹にてやヽ細し、すべてこれ一物なり、