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古今要覧稿
草木
椶櫚竹 〈しゆろちく〉椶櫚竹は、和漢通名にて、その一名お椶竹、一名桃竹、一名桃枝竹、一名陶竹、一名桃糸竹、一名実竹、一名木竹、一名石竹、一名蒲葵竹、一名古散竹、一名綯竹、一名桃笙といふ、此種に大小の異なるあり、其大なるお俗に大椶櫚竹といひ、漢名お朴竹といふ、葉の状全く椶櫚に似て少さく、深緑色にして光沢あり、その幹また椶櫚に似て、至て細小にして、高さ四五尺、毛多く節繁く、中心実して頗る実心竹の如し、年お経るものは、梢の葉間に七八寸の穂お抽出て、細小華おつく、状金栗藺華に似てやヽ粗なり、小なるお俗に琉球椶櫚竹(○○○○○)、一名観音竹(○○○○○)といひ、漢名お筋頭といふ、その状大椶櫚竹に似て至て少さく、高さ僅に一尺許に過ず、葉は淡緑にして薄く、光沢ありて、葉の先すべて下垂するものは、此竹の天廩なり、又一種椶櫚竹あり、漢名お短栖といふ、その葉幹また大椶櫚竹に似て、高さ僅に二尺許に過ざるお異とす、近時別に一種観音竹といふものあり、其葉厚して大椶櫚竹よりも闊く、色深緑にして、葉先下垂せず、幹最肥大にして毛あり、其幹三五年おふるものは、大椶櫚竹とおなじく、梢の葉間に穂おなし華おつく、状及己華に似て、はじめ淡黄色にして、後白色に変じ、また根上より毎幹おの〳〵笋お抽て、叢生恰も枝の如し、これ尋常の椶櫚竹に異なるところなり、思ふに此種は、杜台卿の准賦にいはゆる檳榔竹にてもあるべきにや、