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草木六部耕種法
五/需幹
竹笋お作る法は、独活芽お作ると其意大略相似、然れども竹は能作りて肥太成長せしむるときは、極て有用の多き材なるに、其笋お採食て僅に舌上三寸の賞味と為すことは、天威の畏れ無きに非ず、故に竹笋お作ることは、江南竹(こうなんちく)に限ることヽ知るべし、江南竹は俗に孟宗竹と名るもの即是なり、此竹も成長せしむるに至ては、器物おも造る者なれども、多くは玩弄の物と為る、真竹よりは性脆が故なり、又真竹の笋は作らずして、五月十三日以後に生ずる者は採て食ふべし、凡笋の五月十三日以後に生じたるは、大抵竹の用は為さざる者なり、江南竹お作て笋お採には、早く出すお妙とす、二月三月に出すが如きは、人も亦奇とせざるお以て、農家の利潤お為すこと少し、此物お早く生じ、早く肥太せしむるの法は、荒廃の野原お新に墾き、赭腐櫨(あかのつち)、黒松土(くろぼこ)の論に拘ず、先づ深三尺幅二尺許の長溝お堀り、臘土(らうど)と腐糠(ふかう)〈此二物の製法は、培養秘録に詳説あり、〉と各一石宛に馬溺塩(ばねうえん)〈此も亦秘録中に詳なり〉二斗調合したる糞土お、其底に敷こと一尺二三寸、此糞土の上に江南竹四五本づヽお一株にして、繁からず遠からざるやうに植並べ、肥たる真土と河底の埴泥とお交て、上六七寸許も覆ひ、根の風に動揺せざるやうに控抗お打立て、柵垣お丈夫に結置き、其根覆の土おば圧堅ること勿れ、