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甲子夜話
九十
丙戌の晩秋、某氏より糝糖お贈る、信州より出す所と、淡緑色にして、育鳳鸞と銘ぜり雲ふ竹実お以て製すと、記文お添ふ曰、〈◯中略〉夏のころより、山谷のみすヾ実おむすぶ事おびただしく、みな人打つどひ、是おひろひあつむるに、日々に両三俵お得たり、あらかじめ是お数へたらむに、凡五六万に過し、是まつたく戸隠の恵ならんこと尊ぶべし、 戸隠のみすヾの竹になれる実はふりにし神のめぐみなるらむ 邦守右竹実おもて製し侍る御菓子なり、則戸隠山の御供お御戴被成候にひとしく御座候間、宜御披露可被下候、以上、 みすヾかる信濃国いもいの里白雪斎製 信州善光寺西町御菓子所  府野屋清吉