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視聴草
二集九
出世竹此度武州日光道中草加宿在、足立郡中曾根村農家忠蔵と申者屋敷うちへ、古今まれなる竹の子生ず、是お名付て世人出世竹と唱へける、〈◯中略〉当五月中旬、こぞの如く夢の御告にて、希なる竹の生ずべしとありし処、一両日の内不思議なるかな、真竹山〈江〉ふしま〳〵に玉の付候竹の子、五拾本余生じ、ふきのとうのごとく生立にしたがひ、枝葉風流にして、世の常の竹にあらず、名竹誠に権現の御神徳、正直一致の身体加護まし〳〵、あら有がたの言の葉お、世の人に知らしめんためにあら〳〵筆に記す、 中曾根村錦山忠蔵