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古事記伝

加夜(かや)は此巻末に、以鵜羽為葺草とありて訓葺草雲加夜と註せるぞ本義にて、何にもあれ、屋葺む料の草お雲名なり、万葉一巻に、吾勢子波(わがせこは)、借廬作良須(かりいほつくらす)、草無者(かやなくば)、小松下乃(こまつがもとの)、草乎苅〓(くさおからさね)、又四巻に、板蓋之(いたぶきの)、黒木乃屋根者(くろきのやねは)、山近之(やまちかし)、明日取而(あけむひとりて)、持将参来(もちてまいこむ)、黒樹取(くろぎとり)、草毛刈作(かやもかりつヽ)、仕目利(つかへめど)、勤和気登(いそしきわけと)、将誉十方不在(ほめむともあらず)、又八巻に、波太須珠寸(はたすすき)、尾花逆葺(おばなさかふき)、黒木用(くろきもて)、造有家者(つくれるいへは)、迄万代(よろづよまでに)、これらお合て思べし、茅(かや)と雲一種あるも、屋ふくに主と用る故の名なり、さて野神の御名に負給へる故は、野の主とある物は草にて、草の用は、屋葺ぞ主なりける、故草字おやがて加夜(かや)とも訓り、上代は大御殿お始て、凡て草もて葺つればなり、