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大和本草
四/穀
秈 本草又占稲と雲、時珍雲、秈似粳而粒小、其熟最早、六七月可収、有赤白二色、近世異国より来る故、国俗に大唐米と雲、西土の俗たうぼしと雲、色赤して小粒なり、飯にしてねばりなく、味淡くして消化し易く性かろし、痰多く積滞ある人、飯として食すべし、又こがしとす、臘水に一両日浸して後、日にさらし収置、煮て食すれば、瀉痢おとヾむ、又秈の陳倉米お薬お丸する糊とするに宜し、本草時珍が説に、陳倉米に用之、蒸晒為之といへり、穀ともに貯へおけば、十年二十年おへても不腐、味淡きゆへ虫はまず、鴨にかへば卵お多くうむ、旧穀尽る時秋早く熟し、実お収る事多く、米〓くして他粳より飯多し、故民利之多くつくる、民用に利あり、秈おわせごめと訓ずるは誤なり、田にあるとき颶風にあへば脱やすし、又白米あり潔し、形状同じけれども、実お収むる事、赤米より少し、故に農多くうへず、本草に秈其種占城より閩に来る、赤白二色あり、粳と大同小異といへり、凡諸稲其品甚多し、然其形色性味相似たり、隻秈のみ諸稲と不同、今諸州各処皆之おうふ、