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清良記
七上
五穀雑穀其外物作分号類之事早稲之類一古出挙成(ふるじふなし) 一廿日早稲 一四十早稲 一蓑早稲 一薫早稲 一馬嫁早稲 一黒早稲 一庭たまり 一内たまり 一丹波早稲一九王の子 一畑早稲右十二品は古来の名也、此外餅太米に早稲有、其外今時者色々の名ありといへども、それは其田地等不相応成により、種子かへり又は悪敷〓おそくわれば、色々に変ずる事有り、植前後は此事記ごとくにして、二月彼岸に種子蒔、四月初より同月廿日時分迄に植仕廻、六月末七月の初にかりて、其跡の田地には蕎麦お蒔、小秬小菜お蒔て、九月末に取て、其跡へ早麦お作り、来年中田晩田おおこし、苗代にする粮料あてがふ、此早稲作る事、百姓の一の徳也、此三度の作何もさほど鬧敷なき時分々々仕付て、熟しけるも、其ごとくなるによつて、こなし時も女の隙有てよし、末の暇お奪はず、人手のつかゆるなし、如此早稲中田晩田段々順々に作出ざれば、男女鬧敷事隻一度にかさなり、手廻しよからず、然れば此早稲は戦場の足軽に似て、将棊にては歩兵のごとく、百姓の為のみにもあらず、領主諸士百家の為なり、米の希なる時出来て、切目の専度お助け、其外考るに其利不可勝計、