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傍廂
後篇
無病長寿の霊薬食料の最第一にて、不死の霊薬の長たる物は米なり、人々一日に三度食ふ故に、たヾ飢渇おしのぐ為のみと思ふは、大なる誤なり、第一は、〓お凌ぎ、気根お強くし、腎精おまし、力量おそへ、手足お健にし、いきほひ盛なるは米のよき故なり、皇朝人の長寿にて武勇勝れたるも、異国人の短命にて非力なるも、米のよしあし、諸の食料なべての薬品などは、このかたはしにも及ばず、酒菓子すべての物、飯の上にいづることあたはず、何れも十日、廿日、一年、二年なしとて、一命にかヽはらず、米食は半日くはざれば、気力おとろへ、一日くはざれば、大病の如く、三日くはざれば、死人のごとくなり、いと尊き霊薬にてぞありける、