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百姓伝記

わせ麦種色々あり、三月穂、なかぼろわせ、六角、はだか麦、また中手麦種色々あり、おく麦種猶以様々有、其数書つくしがたし、〈◯中略〉一麦種おほとぼし蒔こと秘事なり、水か小便に油おさし、種麦おそれにてかし、一日二日宛俵となして置、ふくれたるおまくに生出よし、そだち強く、実入よし、水一升のうちへ、油一二合入、又小便も入、麦種に応じて多少有べし、麦粒ふくれしめりお持、蒔よくもありて生出も早し、地のかわける時は、猶以能ものなり、隻しめりて加へるものとしれ、〈◯中略〉一麦おば福者の子にまかせ、大豆おば鳩の餌にせよと雲へり、麦のうすきは取実すくなし、貧しき者の子は、種おおしみ厚くまかず、福者の子はともしきことおしらざるによりて、おしげなく種おあつくまくとなり、