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農家心得草
麦お蒔畦拵の事諸国にて麦お作るお視るに、畦に竪まきあり、横蒔あり、是お横畦竪畦といふ、大和国辺にては、横がんぎ竪がんぎといへり、其外国所にて方言あり、大坂在にて畑に麦お蒔に、弐挺掛(にちやうがけ)といへる犂お用ふ、〈◯中略〉扠蒔べき畑お打ならし、畦お引べき其左右の端に印お付、縄お引、畦切と雲小鍬にて其縄の筋お引、印お付、其印お真中にとり、此二挺懸お跡ずさりして引ば、二筋一度に溝おなせば、其二筋の溝へ壱人立て、麦種子お蒔下すなり、其跡より、壱人蒔たる麦に足にて土おけかけ、其上おふみ付置なり、如此してまけば、常蒔ごとくして蒔より壱反蒔べき所に、三四反も蒔事なり、扠此二筋に蒔とは、一筋に蒔べきお二筋に蒔事なり、此二筋の間七寸、或は七寸五分位の間になれば、麦成長しぬれば、二筋一所になりて、厚く蒔たる畦のごとく見ゆれども、七寸余あひ明て蒔たるなれば、草とり肥しするにも都合よく、又厚けれども程よく成長するなり、