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牧民金鑑
十一
寛政二、戌年九月十五日申渡此度大風雨出水之村々、稲作刈入、籾になし干立方等も別而手間懸り可申候処、百姓家流失潰家に相成、小屋掛等取しつらひ、并耕地石砂取片付等、其外彼是可及混乱事に候、別而愚昧の百姓共は、右体の変災に迷ひ、且は手も届兼、当秋麦作仕付旬後れ等にも可相成哉、麦作の義は百姓夫食第一の作物に候処、万一無仕付、又は旬後れ等に而及不作候様に而は、風水難之上之義、弥艱難事候間、小前のもの等、麦作仕付手届兼候分は、近村々相互に助合、麦作仕付無滞様可致旨、村々〈江〉も申渡、精々心附可取計候、右は今般御沙汰も有之候儀に付申渡候間、可得其意候、〈戌〉九月