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重修本草綱目啓蒙
十七/稷粟
薏苡仁 しこくむぎ(○○○○○)〈防州◯中略〉真の薏苡(○○○○)は享保年中に渡る、春種お下し、苗長じて高さ四五尺、葉互生し、形蜀黍(とうきびの)葉に似て狭短、川穀葉に異ならず、一根に茎お叢生す、夏月葉間に実お結ぶ、形川穀より細小なり、実上に花あり、玉蜀黍(なんばんきびの)花に似て小し、実熟して浅褐黒色、実中に自ら穴ありて貫くべし、重累して生ずる者もあり、皆両指お以推すときは皮破る、仁は麦に似て闊く、白色、外に褐衣あり、実熟して苗根共に枯る、一種とうむぎ(○○○○)、一名朝鮮むぎ、くすだま、〈作州〉城州山城郷に多く栽ゆ、仁お採り粉となし食用とす、薬舗に出さず、苗形薏苡に異ならず、子形闊く短くして尖りあり皮厚く〓し、擊たざれば破れず、皮の色褐にして微黒、竪に筋多し、秋後苗根共に枯る、一種じゆずだま(○○○○○)、一名づしだま、〈和名抄〉すヽだま、〈予州〉ずヾご、〈東国〉はちこく、〈上総〉すだめ、〈三州〉すヾだま、〈阿州〉ずヾだま、〈新校正〉野辺荒廃の地に多し、春宿根より多く叢生す、茎葉は薏苡に異ならず、子大にして白色光りあり、或は黒色、或は黒白斑駁、皆皮甚厚〓、擊といへども破れず、実中に自ら穴あり、穿て貫珠となすべし、小児採て玩とす、野人用て馬飾とす、是救荒本草に載る所の川穀なり、一名穿穀米、〈寿世保元〉菩蔞珠、〈秘伝花鏡〉一種おにじゆずだま(○○○○○○○)、亦宿根より叢生す、形ち川穀に異ならず、実川穀より闊く、扁くして竪にひだあり、色も同じ、殻甚だ堅し、俚人穿て数珠とす、いらたかの数珠と称し、役小角お信ずる者これお用ゆ、是簳珠なり、薬舗に売所の薏苡仁は、皆川殻仁なり、石臼お用て粗磨し仁お採る、又簳珠仁お以て、唐の薏苡と名け売る、皆偽品なり、薬には真なる者お用ゆべし、然れども真物は未だ薬舗に出ず、