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農業全書
二/五穀
薏苡薏苡是二種あり、其粒細長く、皮うすく米白く粘りて、糯米のごとくなるが、真薏苡なり、薬にもこれお用ゆべし、一種又丸く皮厚く、実は少くかたきあり、うゆべからず、又一種菩提子(ぼだいし)とて大きなるあり、数珠とす、うゆる地の事、猶も湿気お好む物なり、何にても糞しお多く用ひ、旱せば水おそそぎ、常にうるほひお保つべし、畦作りつねのごとくし、五六寸に一本づヽ見合せうへ、厚く土おおほひ、芸り培ひ別法なし、苗長く心葉出るお、節おかけてぬき捨べし、心葉おぬかずして置たるは実少し、九月霜ふりて実お取収め、よく干して米にする事は、蒸し乾し、すりくだき、米のごとくこしらゆるなり、宿根より生るは、から堅く子少し、二三月蒔置て移しうゆべし、実は薏苡仁と雲薬種なり、性のよき物なり、病人の食物に調て用ゆべし、粥になり飯に交へ、だんごにしたヽめ、様様料理多し、葉お米にまぜ、飯に調ずれば、その香早稲米の飯のごとし、茶お煎ずるに、葉お少入れば、香よく味もます物なり、