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倭訓栞
中編二十/波
はまおぎ 万葉集に、伊勢の浜荻といへり、蘆おいふなりと顕注密勘にみえたり、されど武蔵風土記に浜荻と葦とお並挙たり、浜辺の荻といふ事にて葦に雑りて生ずる物ゆへに、同集に、葦べなる荻の葉さやぎともよめり、葉のかたかたに著たるに荻多しといへり、今も二見〈の〉浦にかた葉の葦とて名物とせるあり、定家卿万葉の歌おとりて、二見がたいせの浜荻しきたへの衣手かれて夢もむすばず、後拾遺集の作者侍従命婦お浜荻といふは、祭主輔親が猶子なるおもてといへり、