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万葉集抄

みくさとはすヽきなり、此歌点にも、或はおばなかりふきとも、或はみくさかりふきとも点之、此歌にはみくさと点せる殊宜也、みくさといふは、もろ〳〵の草の中に、たかくおおしき草なるがゆへに、真草(まくさ)の義にて、みくさと雲べし、難雲、たかくおヽしきによらば、萩葦等又これあり、何ぞかれおみくさと不雲乎、答雲、たとひ其義もありぬべくとも、古賢者殊秋のはなすヽきお賞せり、故柿本朝臣人麿歌雲、人みなははぎお秋といふいなわれはおばなが末お秋とはいはむ雲雲、又諸草おほしといへども、此集のうたの義読の中に、草花とかきておばなとよむ、これすヽきまことのくさなる故也、