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枕草子
三
草の花はこれにすヽきおいれぬ、いとあやしと人いふめり、秋の野のおしなべたるおかしさは、すヽきにこそあれ、ほさきのすはうにいとこきが、朝ぎりにぬれてうちなびきたるは、さばかりの物やはある、秋のはてぞいと見どころなき、色々にみだれ咲たりし花の、かたもなくちりたるのち、冬のすえまでかしらいとしろく、おほどれたるおもしらで、むかしおもひ出がほになびきて、かひろぎたてる人にこそいみじうにためれ、よそふる事ありて、それおしもこそあはれともおもふべけれ、