[p.0936][p.0937]
重修本草綱目啓蒙
十二/湿草
狗尾草 えぬのこぐさ(○○○○○○)〈和名抄〉 えのこぐさ(○○○○○)〈古歌〉 えのころぐさ(○○○○○○)〈今名〉 とう〳〵ぐさ(○○○○○○)〈備後、狗子お方言にとう〳〵と雲、〉 とう〳〵ぼ(○○○○○)〈備中〉 すヾめのあは(○○○○○○) いのぢあは(○○○○○)〈水戸〉 いのこぐさ(○○○○○)〈長崎〉 いぬぐさ(○○○○)〈泉州〉 えのこぼ(○○○○)〈讃州〉 かにぐさ(○○○○)〈長州〉 とヽこぐさ(○○○○○)〈防州、犬お方言にとヽと雲、〉 おやり(○○○)〈秋田〉 いぬころ〳〵(○○○○○○)〈肥前〉 かいるとヽら(○○○○○○)〈丹波〉 一名猫狗草〈簡便方〉原野随地に皆あり、庭際にも自ら生ず、苗穂共に粟に似て小し、穂に紫毛のもの、緑毛のものあり、地の肥瘠に因て苗に大小あり、蝦夷の産は穂に五六岐お分ち紫色お帯ぶ、〈◯中略〉増、一種かなーりさーと(○○○○○○○)と雲ものあり、即細葉の狗尾草なり、旧子地に落て冬より苗お生ず、葉の形ち小麦の葉に似て、一根数葉地に布て叢生す、夏に至て茎お抽ずること、六七寸にして穂お生ず、その形粟の穂に似て長さ一寸五分許、常の狗尾草に比すれば、嬌嫩にして毛なし、近年金雀(かなーりや)の巣に造り渡りし故に名くと雲、かなーりやは蛮国の名なり、然れどもこの草江州伊吹山に自生あり、又一種朝鮮あはと雲者あり、春月穂お生ず、其穂細くして軟なり、