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重修本草綱目啓蒙
十/湿草
麻黄 かつねくさ あまな〈共に和名抄〉 一名中黄節士〈輟耕録〉 赤根〈瘡瘍全書、根の名、〉和産未だ詳ならず、多く舶来あり、朝鮮にも古はなし、唐山より移し栽て、今は江原道慶尚道に之ありと、東医宝鑑に見たり、海辺沙地に一根叢生す、形木賊(とくさ)に似て至て細く、中の孔甚小にして、実するが如にして黄色なり、葉なく茎のみにして節あり、節ごとに寸許、下節に枝おわかつ、舶来の中に希に花の著たるも、実の著たるもあり、其実の形蘇容の説の如し、外に皮ありてこれお包む、故に如百合弁と雲、闊さ一分許、長さ一分余、其内に子あり、形蕎麦粒の如にして小し、三角にして色も同じ、其根径寸許、長さ数尺、黄赤色なり、今市人いぬどくさ(○○○○○)お以て真の麻黄とす、然れども此草は実お結ばず、故に麻黄に非ず、いぬどくさは一名すぎどくさ、〈江戸〉すぎなどくさ、かはらどくさ、はまどくさ、みづどくさ、〈種樹家〉ちやうせんどくさ、〈同上〉谷地すぎな、〈仙台〉水辺沙地に多し、形状問荊(すぎな)の如にして枝少し、枝なきもの多し、年お歴れば粗大にして、径り二三分、長さ四五尺に至る、乾せば軽虚、淡緑色にして麻黄の形色に異なり、質薄くして中の空虚広き故なり、夏月中心より出たる茎端に花あり、筆頭菜に同して実お結ばず、是問荊の一種なり、決して麻黄に非ず、本草原始に、麻黄茎類節節草と雲、又舶来麻黄中にいぬどくさ多く雑る時は、河原どくさは節節草なるべし、此草根深く土中に入ること、問荊と同じ大さにして色黒し、麻黄根の黄赤色なるに異なり、