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重修本草綱目啓蒙
二十二/水果
慈姑 くわい(○○○)〈和名抄〉 くわえ(○○○) しろぐわい(○○○○○) つらわれ(○○○○)〈越前◯中略〉水田に栽ゆ、葉長して尖り、下は二つに分れ、剪刀の形の如し、故に剪刀草燕尾草の名あり、一種おもだか(○○○○)あり、一名はなぐわい、葉の形状くわいに異ならず、隻瘠小なり、夏月別に茎お抽て、三枝お分ち花お開く、白色三弁にして内に黄蘂あり、容の説に四弁と雲は非なり、一種千葉の者は鈴子菊(こがねめぬきの)花の如し、この根狭小食用に堪へず、隻種て花お賞するのみ、池沢に自生多し、おもだかは東医宝鑑の野茨菰草、花譜の慈菰花なり、慈姑は花お開かず、希に花お開く者あり、其根夏秋は細白条のみ、冬春堀る時は塊根あり、京師の産は、形円にして大さ七八分、或は一寸、皮淡青にして肉白し、皮お去り煮て食用に供す、他州の産は形大にして、微長味劣れり、一種根小にして無患(むくろじ)子の大さなる者あり、まめぐわい(○○○○○)と雲ふ、又すいたぐわいと雲ふ、摂州吸田村にて多く種へ出す故に名く、二三月京師に売る、はかりぐわいと雲、能州にてごわいと雲、苗形同じく小なり、一種細葉のおもだか(○○○○○○○)、池沢に自生あり、葉闊さ三四分、長さ一尺許、花も亦小し、これお鳥羽絵ぐわいと雲、一名あぎなし、〈筑前〉おとがいなし、〈仙台〉其初出の葉岐なくして、竹葉の長きが如し、故名く、是等皆慈姑の品なり、