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重修本草綱目啓蒙
九/芳草荊三稜 みくり(○○○)〈和名抄〉 みつかど(○○○○)〈芸州〉 うきやがら(○○○○○)〈伏見〉 やがら(○○○)〈河州〉 ろうとう(○○○○)〈播州〉 一名削堅都尉〈薬譜〉 削堅中尉〈輟耕録〉 牛夫月乙〈郷薬本草〉今漢渡なし、水沢中に多く生ず、春後旧根より苗お生ず、葉は薹葉に似て狭く厚く光あり、一科に叢生す、長さ二三尺、中心茎お出す、高さ四五尺、三稜ありて削り成すが如し、葉互生す、上に至りて漸く短し、茎頂に三小葉お対生し、上に小叉お分生し、黄紫色の小円穂お出す、地楊梅(すヾめのやり)の穂の形の如し、根は芋卵の如く両頭尖り黒毛あり、又三方に短茎お分ち、其末ごとに嫩根お生ずること品字の如し、後漸く大になりて新苗お生ず、薬舗に売るもの、丹波肥後の産は皮お去り易し、上品なり、佐渡の産は扁くして皮お去り難し、これは救荒本草に載する黒三稜(○○○)にして、集解の黒三稜とは別なり、又葧臍にも黒三稜の名あり、黒三稜はこれも俗にみくりと呼ぶ、蒲の葉に似て狭窄にして三稜あり、叢中より円茎お抽て、上に青毬数塊お貫ぬきて累々たり、其毬大さ六七分、慈姑実に似たり、これ集解に謂ゆる淮南江蒲根なり、薬用には下品とす、又京師の加茂川及御菩薩(みぞろ)池に生ずるものは形状略同じけれども根小さし、赤黒三稜の一種なり、別に又石三稜(おさすげ)、草三稜(おほかやつり)あり、増、石三稜は水陸共に産す、大抵三稜の葉に似て〓くして短し、長さ僅に一二尺、春月別に茎お生じて、その末に枝お分ち各穂になりて花お開く、黒色にして正中に白き蕊あり、実熟すればその穂痩て下垂す、一種山中石間に生じて、形小く葉細きものあり、いわすげと名く、