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大和本草
六/薬
天南星 二種あり、一種葉芋の葉の色に似て光あり、岐ありて三にわかる、実紅なり、一処に多くあつまりみのる、玉蜀黍の実の如し、十月に熟す、一種菎蒻に似てくきに黒点多し、本草にも二種ありとしるせり、花は反りて鐙の如し、根お薬とす、薬には二種ともに用ゆ、又白花あり皆毒あり、されども虫このんで食ふ、久く貯るにはあらく刻み、時々日に干べし、不然虫食ふ、大なる根お可用、小根は性薄し、製法あらく刻み沸湯に〓す、〓して湯ひえて後、又沸湯に〓す、熱のさめざる内に、又〓すべからず、能ひえて後又沸湯に〓す、凡七度、又刻み日にほし、あらく末し、生薑の自然汁によきほどに和すべし、甚しるく和過たるはあしヽ堅めて小餅とし、籃に入上に木葉お掩ひ、器に入ふたおおほひ、又戸棚の内に入置、或かうじ屋のむろに七日ほど入置、黄なる〓出る時取出し、くだき日にほし炒る、夏月に製すべし、〓出やすし、製法よからざれば毒さらず、半夏も同じ、本草通玄曰、生にて用者温湯洗過、礬湯浸三日夜、日日換水晒乾、熟用者酒浸一宿、入甑蒸一日、以不麻舌為度、時珍雲、小者為由跋、乃一種也、今案山中に似天南星而小者あり、是由跋なるべし、