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成形図説
二十二/菜
石芋(いしいも)〈相模等の国にていふ、又水芭蕉観音蓮などの異名おほし、〉 毒芋(どくいも)〈亦曰大師芋、俚諺に曰、むかし弘法大師道に〓て、芋お洗ふ婦人の遇へるに、之お乞て与ざりしより、其芋遂に毒草に化りとぞ、是其事お誣て神にせんとし、此不用の毒草おして、大師芋てふ悪名お貽せり、実は弘法の寃と雲べし、〉 芭蕉芋(はせやいも)〈南島はせやは、はせおの転るなり、〉 熊坂(くまさか)〈信濃〉 倍古乃舌(べこのした)〈東奥牛おべこと雲、此花牛舌に似たり、◯中略〉此自生の毒芋なり、茎葉深緑にして光沢あり、博物志雲、野芋小于家芋、食之殺人、蓋蘞也、本草中にも、野芋は大毒不可啖之よし見えたり、しかるに南島の地此ものヽ多く、一たび荒嫌に遇て死お免かれがたき時は、已ことお得ずして、此ものお掘とり砂糖に和て煮食ふことあり、而其毒に中れる者亦少からず、唯挙体腫脹(みのうちはれふくれ)て患ふと雲り、