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百姓伝記
十二
蒟蒻芋お作る事蒟蒻芋お作るに、何国にても山家に多く作りて、平場の村里に多く作るものならず、何国にも山中は五穀雑穀せんざいの品々、蒔植することならざる地多き故なり、木影物影に植ても能く育ち芋出来なり、蒟蒻芋は、黒ぶく地、其外木かやの腐り重なりたる所に植て相応せり、一度植たる処には、こつぜんと小さき芋、毎年はへ出る、葉の露茎の露落て種となる、子もさかず一本立に育つものなり、肥し養なひ塵芥灰お用てよし、不浄は能らず、多くは諸草の腐りたるお畑に置てよし、湿地日やけ処お嫌ふものなり、在家にては大芋になること遅し、二年三年にして大きになるなり、