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倭訓栞
前編十九/那
なぎ〈◯中略〉 倭名抄に水葱お訓ぜり、古へ菜茹したるにや、新猿楽記に腐水葱と見え、万葉集になぎのあへものとよめり、菜葱の訓義なるべし、されど水葱はふとい也、なぎは三才図会にいふ浮薔也といへり、新撰字鏡には、荅おうきなぎとよめり、俗に水葵とも、沢桔梗ともいへり、中国九州にあきなしといふ、駿河に荇おなぎといふ、歌にこなぎともよめり、田水葱といふも見ゆ、田につくりたる事、宇治拾遺に見えたり、催馬楽にもよめり、枕草紙に八幡の事書るに、みゆきなどに、なぎの花のみこしに奉るなど、いとめでたしとみえたり、