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甲斐国志
百二十三/産物及製造
一藺 万力筋窪八幡諸村に植え、為藺席甚多し、藺田は上々田にて上田の盛〈り〉よりも高く、大抵壱段弐石弐斗なり、八幡内市河村の産お佳とす、畳席の表に用ふ、方言に上敷又御座とも雲、〈莞筵〉熊野村お古昔は御座郷横井村と称しき、此辺にて製せしことなるべし、河内の中山夜子(よご)沢村、切石村の辺にて作お切石御座と呼ぶ、下部村、田〈ん〉原村辺にても作る、西郡の落合村、湯沢村、舂米村辺にても作り藺田あり、此にて製する莞筵(/ござ)は又縁方言みヽかきと雲、両端の縁お編み付るなり、畳表には狭くして用がたし、一すぢ縦とて糸お一線するなり、凡て藺お植る処には麻お植う莞筵の糸に用ふる故なり、湯沢御座、明王御座と雲、明王とは舂米の枝村なり、皆単席(/うすべり)に用ふ、