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東雅
十三/穀蔬
百合ゆり〈◯中略〉 古事記に神武天皇狭井河の上に幸ませし事お記して、其河謂狭韋河由者、於其河辺山由理草多在、故取其山由理草之名、号佐韋河也、山由理之本名雲佐韋也、と見えたり、山由理といふは、百合紅花者名山〓といふもの是也、百合ゆりと雲ひし事は、日本紀に見えし所に拠るに、高麗百済等地方の呼びし所と見えたり、〈やまゆりの本名、さいといひし事の如き、古事記に註せる事なからましかば、誰かは知る事お得べき、物名ひとり地方によりて異なるのみにあらず、古今の同じからぬ、かくの如し、今に依りて其説おなし難き事也、〉