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重修本草綱目啓蒙
十九/柔滑
百合 さヽゆり やまゆり さゆり 一名鬼蒜〈女南甫史〉 野百合〈附方〉 摩羅春〈秘伝花鏡〉 犬伊日根〈村家方〉 倒仙〈福州府志〉 増一名重匡〈格致鏡原〉 介伊日草〈郷薬本草〉 玉手炉〈八閩通志〉ゆりの品類甚多く、二三百種に止まらず、皆花お賞するのみにして薬に入ず、薬用は山中自生の者お採る、故にやまゆり(○○○○)と呼ぶ、春旧根より生じ、円茎高さ三四尺直立す、葉は竹葉の如にして、厚して光りあり、故にさヽゆりと呼ぶ、五月茎梢に花お開くこと一二蕚、年久しき者は五六蕚に至る、皆開て傍に向ふ、六弁長さ四寸許、弁の本は聚て筒の如く、末は開て反巻す、白色にして微紫、花後実お結ぶ、形卵の如く、緑色熟する時は内に薄片多し、即其子なり、其根は白色にして弁多く並び重りて蓮花の如し、食用に入るゆりねと呼ぶ、今菜店に貯る者は皆巻〓根なり、味苦し、今は細葉の巻〓お種て売る、味苦からず、和州談山に自生の百合あり、食用に良なり、故に方言料理ゆり(○○○○)と雲、即芳野ゆりなり、苗のさヽゆりより長大、葉も亦大なり、花は白色最大にして尺に近し、弁ごとに黄道及び紫点あり、香気甚し、女南甫史に載する所の天香百合なり、根も亦大なり、又変科に用ゆる、れりようろんはりうきうゆり(○○○○○○)なり、筑前にてたかさごと呼ぶ、其茎高さ一尺に過ず、花は白色さヽゆりより長くして五寸許、傍に向て開く、香気甚し、是女南甫史の麝香百合なり、正誤、巻〓(○○)はおにゆりなり、一名くるまゆり、〈仙台〉がうろ、〈予州、防州、〉がうる、〈予州〉此草路傍に甚多し、春旧根より苗お生ず、円茎紫黒色、葉形狭長にして竹葉に似ず、多く互生し深緑色、秋に至て茎梢に花あり、枝お分て開く、六弁皆反巻す、赤黄色にして紫点あり、子は已に夏中根葉間に生ず、円小にして零余子の形の如く、紫黒色、自ら落自ら生ず、此草花は梢上にあり、子は根葉間にあり、故に群芳譜に回頭見子花の名あり、一名虎皮百合、〈女南甫史〉連珠〈同上〉珍珠、〈群芳譜〉番山〓、捲〓、〈共同上〉山〓(○○) ひかりぐさ〈古歌〉 ひめゆり ひゆり 一名渥〓〈秘伝花鏡〉 沃〓〈群芳譜〉 散〓〈同上〉 石榴紅〈女南甫史〉 鶴頂〈花暦百詠〉種樹家に多く栽ゆ、人家にも蒔て花お賞す、和州伊州山中には自生あり、春旧根より苗お生ず、一根一茎高さ一尺余、葉密に互生す、巻〓葉に似て小く色浅し、五月茎頂に花あり、大さ躑躅花の如し、六弁天に向て開く、紅黄色、其深紅色なる者おひゆり(○○○)と雲、黄色なる者おきひめゆり(○○○○○)と雲、遵生八揃の黄山〓なり、又黄花にして紅間なる者あり、共に花戸に多し、唐山には白花の者あり、遵生八揃に白山〓の名あり、山〓三物同名あり、一は単葉牡丹、一は紅繡毬(さんだんくは)なり、