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重修本草綱目啓蒙
七/山草
黄精 おほえみ(○○○○)〈和名抄〉 やまえみ(○○○○)〈同上〉 なるこゆり(○○○○○) さヽゆり(○○○○) さヽかんざう(○○○○○○) つりがねさう(○○○○○○)〈〓波〉 つゆくさ(○○○○)〈地錦抄〉 一名黄独〈典籍便覧〉 沙田髄〈輟耕録〉 玉芝草〈群芳譜〉 大陽草〈事物紺珠〉 竹大根〈郷薬本草〉山中陰地に生ず、数品あり、皆春宿根より苗お生ず、初め地お出る時籜ありて包み、小笋の状の如し、長ずれば茎の高さ一二尺或は四五尺、微斜にして直上せず、円形嫩緑光沢ありて、百合茎に似て細く痩その葉互生す、竹葉黄精は葉形狭長にして竹葉の如く、又百合葉に似て柔薄、光滑にして細縦理あり、長さ三五寸、四五月葉間に花お開く、本は筒にして末は五弁に分れ、形沙参花の如くにして蒂なし、色しろくして弁は微緑、みな下垂して生ず、後円実お結ぶ、南燭子より大なり、熟すれば黒色中に細子あり、其根白色横生して節あり、年ごとに一節お増し、年お積て漸く長じ、生時味微簽、本草原始に、生刺人喉と雲、是玉竹黄精なり、大葉黄精は葉長大にして粗理、苗高さ四五尺、その根節節円扁、大さ一寸余、横二連生して白及(しらん)根の形の如し、山人煮熟して食ふ、味薯蕷の如し、是白及黄精なり、円葉黄精は苗高さ一二尺、茎は竹葉の者より細く、葉は萎蕤葉より短く、〓く、して光あり、その花亦小なり、根は竹葉の者に異ならず、唐種の黄精あり、即享保年中に渡るところなりと雲ふ、その形状竹葉黄精に異ならず、惟その葉互生し或両葉相対し、或五七葉相対するもの一茎に雑り生じ、紹興本草に図するが如きお異なりとす、是正精なり、蔵器の説に偏精功用不如正精と雲、此に拠るときは唐種と称するものお上品とすべし、和産は皆偏精なり、物理小識に、偏精お萎蕤と為は非なり、此外品精猶多し、薬舗に販く者舶来なし、皆和産なり、奥州南部より出お上品とす、その形最肥大なり、然れども多く萎蕤お混ず、故に市人これお択び分ち、節ある者お生薑手の黄精と呼ぶ、即黄精なり、、節なき者お地黄手の黄精と呼ぶ、即萎蕤也、又南部より蒸黄精お出す、黒色にして味熟地黄の如し、用て果食に供す、蘇容の説に、蒸黄精のことお雲ふ、本草原始に、熟味甘甜堪食、熟深黒色象地黄、有二三岐者、有一二岐者と雲ふ是なり、熟は九蒸九曝するお雲ふ、