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草木育種後編
下/薬品
貝母(はいも)〈本草〉 和名はヽくり、〈和名抄〉一名おひ、〈字鏡〉俗にはるゆりといふ、早春より芽お出し、二月の比花お開く、畦お作り秋月糞汁お澆ぎ置て、冬月根お堀り出し、大なるお製し、小なるは畦へ植べし、此品享保九年三月、唐山より始めて日本へ献ぜし時、御医師へも鑒定お命ぜられたれども知れず、翁の門人植村某おして将翁先生〈◯阿部〉に審定せしむ、翁是は貝母なりと雲、官始めて舶来の品よく審定せりとて、即其生根お賜はり培養せしむ、以後本邦に此薬ありて、当今随地養ふて、或は早春の挿花にも用ゆ、