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農業全書
四/菜
薤(らつけう/やぶにらとも雲)薤是お火葱とも雲、味少辛く、さのみ臭からず、功能ある物にて、人お補ひ温め、又は学問する人つねに是お食すれば、神に通じ魂魄お安ずる物なり、うゆる地、白砂の軟かなる肥地お、二三遍も耕しこなし、二三月分て一科に、四五本づヽうゆべし、さい〳〵中うちし、根の廻りおかきさらへ、畦中おきれいにしておくべし、湿気のつよきおにくむ物なり、是もわけぎのごとく分てとるべし、根お塩醤に漬置て用ゆべし、又煮て食し、或糟に漬醋に浸、又少ゆびき、醋と醤油に漬たるは久しく損ぜず、味よき物なり、又は醋味噌にて食す、牙音ありて、気味おもしろき物なり、たねお取おく事も、春葱と同じ、時珍が雲、八月に根おうへ、正月にわかちて肥地うへ、五月に根おとるべし、