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倭訓栞
前編二/阿
あらヽぎ 日本紀に蘭およみ、和名抄に蘭蒚およめり、荒々葱(あらヽぎ)の義にて、蘭葱おいへり、大膳式に蘭幾把と書せしも是なり、又山蘭といふものも見えたり、催馬楽に、手なふれそといへる是なるべし、新撰字鏡に〓お家あらヽきと見えたり、倭名抄に辛夷おやまあらヽきと訓ぜるは、其香おいふなり、今も木襲にしかいへり、斎宮の忌詞に、塔おあららきといふは、阿蘭若の意といへど、葱台の貌九輪のあたりに似たるおもて、俗に塔のたつといふ意にて、蘭葱より出たる詞なるべし、