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古今要覧稿
草木
すまろ草 〈天門冬〉この種皇朝にては、瀕海の地に産するもの多くして、山生の物至て少なし、伝聞比叡山曾て此物お生ぜしが、毎歳京都の人きそひてこれお採しより、今は絶てみえずと、かヽれば皇朝にも山生のものなしとはいふべからざれど、瀕海のものよりは、その種はなはだまれなるは、自是風土のしからしむるなり、また抱朴子、天門冬生高地、根短味甜、気香者上、其生水側下地者、葉細似薀而微黄、根長而味多苦、気臭者下とみえたり、西土にも山生のみならず、水側下地に生ずるもあること明らけし、されど皇朝の産は多く瀕海の地に生ずれども、其品却てよろし、これ又風土の然らしむる故なるべし、