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草木六部耕種法
十/需花
葉蘭(○○)は物理小識に、一船〓と称するもの即是なり、此物にも白き星ある者あり、間道なる者あり、間道なるお俗に近江葉蘭と雲ふ、此も余り多く糞肥お用れば、其白斑変じて常の如き青葉に帰る者なり、故に一船〓お作るには、真土に溝底の揚土の乾たるお、各半に耕交、馬溺塩お少々入て植るお良とす、油糟お粉にして、水に釈置て時々此お澆げば、殊に能く繁生す、根お分て植るは、時に拘はらざれども、八九月お上とし、二三月も亦宜し、又此物は春分前後に根本の土際に花開て実お結び、秋に至れば其形状柚子の如く、其中の仁は玉蜀黍の種子に似たる者なり、此お採て直に植れば、能く生じて長じ易し、総て此等の草は寒気お悪ども日光お畏る、宜く陰地に此お植て、冬は避冷の法お行ふべし、凡そ一船〓お種るには、狭葉闊葉の別ありて、闊葉なるは、其性軟弱にして葉下低る下品なり、狭葉は性剛強にして葉直立(すぐにた)つ、上品なり、頭髪頭垢お肥養に用れば、殊に能く直立す、培養お懇到にすれば、其丈六七尺に及ぶ、狭葉にても甚だ大なる葉お生ずる者なり、凡そ草木お作りて其葉に斑お生ぜしむることは、全く糞苴に因て、種々の変化お発する者なり、