[p.1074]
大和本草
九/雑草
綿棗児(つるぼ) 野甫に多く自生す、葉は薤に似て、若き苗は紫色お帯ぶ、冬も葉あり不枯、つるぼは京都の方言也、筑紫にてはずいへらと雲、根は水仙の如し、救荒本草曰、一名石棗児、根は独頭蒜に似たり、花は莧の穂に似て淡江微帯紫色、其子小にして黒色、根味甘採取根漆水久煮、極熟食之、不換水煮食、後腹中鳴有下気、国俗に婦人の積滞あるに煮て食すれば験ありと雲、虚人には不可也、性冷滑にして瀉下す、飢人食へば瀉下しやすく、身はるヽと雲、故に凶年にも多く食はず、水おかへて久しく煮れば無害、村民不知之、是おすみれと雲は誤れり、水おかへて久く煮る事お貧民に可教、