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大和本草
九/雑草
浜木綿 おもとに似たり、俗名にはまおもと(○○○○○)とも雲、海辺に生ず、七八月白花おひらく、茎高くのびて隻梢に数花あつまりひらく、巻丹の花の形に似たり非好花、季秋結実、花さきたるあとに数顆みのる、一顆の大如胡桃、内に無〓有白肉、万葉集第四柿本人丸歌雲、みくまのヽうらのはまゆふもヽえなるこヽろは思へどたヾにあはぬかも、仙覚抄雲、浜ゆふは芭蕉に似てちいさき草也、茎の幾重ともなくかさなりたる也、へぎて見れば、白くて紙などのやうにへだてあるなり、大臣大饗などには、鳥の別足つヽまんれうに、三熊野浦よりしてのぼせらるヽといへり、綺語抄雲、浜ゆふは芭蕉葉に似たる草、浜に生る也、茎の百重あるなり、篤信曰、今按に西土にもあり、はまばせうと雲、紀州熊野の浜に多し、甚雪寒お畏る、宅中にうへては冬月わらにてあつくつヽみ、或こもお以おほふべし、不然枯る、盆にうへて屋下の暖処におくべし、海浜にありては潮風温にして雪早く消るゆへかれず、二種あり、一種は葉柔薄、其茎の皮多く重れり、是百重なるとよみしなるべし、一種は葉つよくあつし、茎皮かさならず、